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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)12058号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 そこで、原告の本件特許権一部取得の原因である共有契約が真実されたものであるかどうかについて検討する。

<書証>共有契約書のうち、被告名下の印影が被告の印章によつて顕出されたものであることは、被告の自認するところであるから、同号証中被告作成名義の部分が真正に成立したものと推定されるところ、被告は、同号証は、偽造されたものである旨主張し、被告本人尋問の結果中には、同号証に自己の印章を押印したことはない旨の供述が存するけれども、この供述は、証人S、原告本人の各供述に照らし、にわかに採用できないし、ほかに被告主張の事実を認めるに足りる証拠は存しない。

しかし、証人H、Sの各証言部分、証人Sの証言、原・被告各本人尋問の結果部分および本件口頭弁論の全趣旨を総合すると、被告は、I機械の代表者として自己の有する本件特許権をI機械の事業として実施していたが、昭和四三年九月ころから、その経営資金に窮して原告の主宰する訴外Gで、手形の割引を受け、昭和四三年末ころ、Gが事業を止めるに際し、その社員であつたSが代表者となつて訴外Y商事株式会社として金融業をはじめることになり、その顧問であつた原告との間で、I機械の経営につき相談し、同人に対し、経理面の担当者の紹介を請うたほか、その運転資金の融通を求めた結果、経理担当者としてHの紹介を得て同人を採用し、その後、運転資金の融通に関連して、原告から「本件特許権が原・被告の共有であるという書面を見せれば、金主から融資を受け易い」旨の話をきき、昭和四四年二月一五日ころ、被告は、単に原告のいう金主に見せるためとの趣旨で、本件特許権を原告と共有にすることを承諾する旨表示した承諾書を前記Hに作成させてY商事に赴いたが、結局、原告から、その記載形式が適当でないといわれ、Y商事に被告個人の不動産権利証を差し入れて同日金一〇〇万円の融資(手形割引)を受け、同月一九日ころY商事の事務所で、自己の印鑑を原告に交付し、原告は、自己の依頼した弁護士の起案した「共有契約者」と題する文書の被告名下に押捺したものである。その際、本件特許権の一部取得の登録申請に必要な書類は一切作成しなかつた。その後、被告は、原告らの奨めもあつて東京都中央区日本橋にI機械の営業所を設け、原告も同所に出て働くことになつたが、原告と被告との間が悪くなり、原告がI機械に対する融資の仲介を断わるようになり、同年九月ころ、I機械は、ついに手形の不渡を出すことになつたため、危険を感じた原告は、以前融資のため預つていた原告名義の白紙委任状、印鑑証明書を流用し、弁護士を代理人として、本件特許権の一部取得の登録申請をし、その旨の登録を得た。これより以前、被告は、原告に対し、I機械の事業内容を説明し、理解を得るため本件特許の特許証を交付していたが、後日返還を求めて来たところ、原告から今は手元にないとか、他へ行つているとかいわれてその返還を受けられなかつた。被告は、事実上、I機械が倒産したため、暫らく行方を明らかにしなかつたが、同年一一月ころ、その下請関係の債権者らと会つた際に、債権者らから、被告は本件特許権を有していないだろういわれ、驚いて、特許庁へ赴いて調べたところ、原告との共有になつていることをはじめて知つたものである。このような事実が認められ、この認定に反する前記証人、原、被告各本人の各供述部分は、にわかに採用できない。

以上認定の事実関係からすると、前記共有契約書は、単に、原告の金主に見せる方便として作成されたものであつて、原、被告間で本件特許権を共有にするとの真実の意思の合致があつたものとする証左とはなし得ない。ほかに、原告主張の共有契約を肯認できる証拠はない。

三 よつて、本件特許権につき共有権者であることを前提とする原告の本訴請求は、その余の点につき検討するまでもなく理由がないから失当としてこれを棄却する。

(荒木秀一 野沢明 元木伸)

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